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​研究キーワード:

交雑、サケ科魚類、適応度、外来種、絶滅危惧種、水産資源、標識再捕、形態、集団遺伝

主要論文の簡単な紹介:

​絶滅危惧種オショロコマを襲う、外来カワマスからの遺伝子浸透 Fukui et al., Zool. Sci., 2021

 DNA解析から、北海道の西別川水系でオショロコマとカワマスが交雑していることを明らかにしました。外来カワマスとの交雑は、絶滅危惧種であるオショロコマの遺伝的固有性を失わせたり、繁殖効率を低下させる恐れがあるため、今後は、より詳細な調査が必要です。[プレスリリース][環境展望台][北海道新聞][毎日新聞]

​※上の写真は左から順に、オショロコマ、雑種個体、カワマス

​外来カワマスと在来イワナの雑種は、生存率と成長率で純血種に劣らず、媒介者として外来遺伝子を拡散させうる Fukui & Koizumi, Ecol. Freshwat. Fish., 2020

 北海道空知川の支流で、カワマスとイワナそれらの雑種に個体識別を施し、全1087個体の寿命が尽きるまで追跡しました(4年間)。

 この調査で、各個体の生存・成長・移動性がわかりました。雑種の生存率と成長率は、純血種(カワマスとイワナ)と同程度でした。一方、外来カワマスの移動範囲は最も狭かったのですが、雑種個体は在来イワナと同じくらい広範囲に移動していました。つまり、外来種自体が広がらずとも、雑種個体が媒介者として外来遺伝子を拡散させる恐れがあります

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隠微なオスの繁殖形質が、雑種の繁殖成功度を低下させる Fukui et al., Ecol. Evol., 2018

 この研究では、外来カワマス・在来イワナ・それらの雑種個体の繁殖成功度(残した子どもの数)を調べました。

 野外調査と形態+DNA解析の結果、雑種個体の繁殖成功度が低いこと、それは雑種個体の中途半端な形態(二次性徴)に起因することを明らかにしました。

​ DNA解析では、236個体の親と637個体の子供の間で親子判定を行っています。また、親は詳細な形態解析を行うことで、二次性徴の強さなども定量化しています。

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​外来種自体の分布域が縮小しても、外来遺伝子は残り続ける Fukui et al., Hydrobiologia, 2016

 北海道空知川で、外来種のカワマスと在来種のイワナ(アメマス)、両者の雑種個体の分布が、過去10年でどのように変化したのかを調べました。

 外来種と言えば、どんどん侵略する印象が強いですが、本河川ではむしろ、外来カワマスの分布域は縮小していました。しかし、雑種個体には生殖能力があり、遺伝子浸透を通して、外来遺伝子が残り続けていることがわかりました。

小話:これが処女論文でした。当時のポスドクの先輩と指導教官から調査方法を、留学生のShannanからは遺伝解析を教わりながら、なんとか論文化までこぎつけました。今では、とても思い出深い一本です。

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