研究キーワード:
交雑、サケ科魚類、適応度、外来種、絶滅危惧種、水産資源、標識再捕、形態、集団遺伝
主要論文の簡単な紹介:
外来カワマスと在来イワナの雑種は、生存率と成長率で純血種に劣らず、媒介者として外来遺伝子を拡散させうる Fukui & Koizumi, Ecol. Freshwat. Fish., 2020
北海道空知川の支流で、カワマスとイワナ、それらの雑種に個体識別を施し、全1087個体の寿命が尽きるまで追跡しました(4年間)。
この調査で、各個体の生存・成長・移動性がわかりました。雑種の生存率と成長率は、純血種(カワマスとイワナ)と同程度でした。一方、外来カワマスの移動範囲は最も狭かったのですが、雑種個体は在来イワナと同じくらい広範囲に移動していました。つまり、外来種自体が広がらずとも、雑種個体が媒介者として外来遺伝子を拡散させる恐れがあります。


隠微なオスの繁殖形質が、雑種の繁殖成功度を低下させる Fukui et al., Ecol. Evol., 2018
この研究では、外来カワマス・在来イワナ・それらの雑種個体の繁殖成功度(残した子どもの数)を調べました。
野外調査と形態+DNA解析の結果、雑種個体の繁殖成功度が低いこと、それは雑種個体の中途半端な形態(二次性徴)に起因することを明らかにしました。
DNA解析では、236個体の親と637個体の子供の間で親子判定を行っています。また、親は詳細な形態解析を行うことで、二次性徴の強さなども定量化しています。

外来種自体の分布域が縮小しても、外来遺伝子は残り続ける Fukui et al., Hydrobiologia, 2016
北海道空知川で、外来種のカワマスと在来種のイワナ(アメマス)、両者の雑種個体の分布が、過去10年でどのように変化したのかを調べました。
外来種と言えば、どんどん侵略する印象が強いですが、本河川ではむしろ、外来カワマスの分布域は縮小していました。しかし、雑種個体には生殖能力があり、遺伝子浸透を通して、外来遺伝子が残り続けていることがわかりました。
小話:これが処女論文でした。当時のポスドクの先輩と指導教官から調査方法を、留学生のShannanからは遺伝解析を教わりながら、なんとか論文化までこぎつけました。今では、とても思い出深い一本です。
